住職の小話
2022.05.27
蓮如上人のお言葉より 酒など冷やせと仰せられ候
本願寺第8代門主『蓮如上人御一代記聞書』という書物の中に、蓮如上人のこんなエピソードが書かれています。時は、約500年前になりますが、「寒空の中に本願寺にお参りされた方々には、お酒をカンしてさしあげて、道中の寒さをしのぐように。また炎天下の中にお寺にお越しくださった方には、酒を冷やしてお出ししなさい」と、お寺にお参りになられた方々に、大変気配りをされておられたそうです。また、こうしたお酒の配慮だけでなく、お参りになられた時に、取次ぎにてまどって、長く待たせすることも嫌われたそうです。
このエピソードは、蓮如上人が僧侶も在家も関係なく、同じ親鸞聖人の教えに集う仲間として、ご門徒様を大切に思っておられたお姿がうかがえる内容です。当時、大きな飢饉や戦乱の世の中で、お酒はきわめて贅沢なものでした。ですが、贅沢なものであるからこそ、遠い道のりを命がけでお参りになる参詣者にとって、この上なくうれしいもてなしであり、なによりお寺が憩いの場所となったのでした。
仏教の教えの中には不飲酒戒(ふおんじゅかい)というお酒を飲んではならないという戒めもありますが、そのお酒すらも、蓮如上人は大切な接待の一つとされていました。それは、なによりもまず、ご門徒様がお寺に足を運んでくださることを喜ばれたからです。お酒を振舞うことが、ご門徒の皆様と一緒に、仏法を喜ばせていただく一つの縁となるのであれば、それもまたお釈迦様や親鸞聖人への報謝であるという上人の思いが、ひしひしと伝わってきます。以前は覚善寺でも、壮年会、青年会の行事の後、法座の終了後等にみなさんでよく飲み会や焼肉をしたものでした。新型コロナウイルス感染拡大防止のため近年はそれもできない状況にあります。新型コロナが収束すれば、ふれあいの場を再開したいと願っております。お寺から焼肉のいい匂いがしてくるのは、いかがなものかとおっしゃる方もおられるかもしれませんが、このことが皆様がお寺にお参りになる一つのご縁となればと思っています。きっと蓮如上人も許してくださることでしょう。
普段は忙しくてなかなか法話会にご参加出来ないという方や、初めてで行きにくいと思っておられる方々も、楽しい場所に遊びにくるような気持ちで、お気軽にお越しください。皆様が、「仏様のお話が聞きたくなった時には、あそこに行けばいいんだ。」と思ってくださる場所になれば、こんなに嬉しいことはないのですから。
自ら走り出んばかりに、訪ねて来られた者の手を取り、酒をふるまい、ねぎらっておられた蓮如上人のお姿を忘れず、皆様と共にお念仏を喜ばせていただきたいものです。